「親友交歓」(太宰治)
やはり随筆ではなく「私小説」なのでしょう 「親友交歓」(太宰治)(「ヴィヨンの妻」)新潮文庫 東京で罹災し、帰郷していた「私」は、一人の男の訪問を受ける。男は「私」の「親友」であり平田と名乗ったが、「私」にはその男の記憶...
やはり随筆ではなく「私小説」なのでしょう 「親友交歓」(太宰治)(「ヴィヨンの妻」)新潮文庫 東京で罹災し、帰郷していた「私」は、一人の男の訪問を受ける。男は「私」の「親友」であり平田と名乗ったが、「私」にはその男の記憶...
太宰は、いたって真面目だったのではないか 「惜別」(太宰治)(「惜別」)新潮文庫 自分一人と思っていた松島遊覧の船中にはもう一人、同じ仙台医専の制服の学生がいた。船が岸に着くやいなや、逃げるように島の山中へと歩を進めた「...
登場人物のどこかに太宰自身が顔を出すのが常です 「右大臣実朝」(太宰治)(「惜別」)新潮文庫 おたづねの鎌倉右大臣さまに就いて、それでは私の見たところ聞いたところ、つとめて虚飾を避けてありのまま、あなたにお知らせ申し上げ...
なぜ「読者の推量にまかせ」たのか 「水仙」(太宰治)(「きりぎりす」)新潮文庫 前回取り上げた太宰の「水仙」。やはり太宰は終末で仕掛けを施しています。「水仙の絵は、断じて、 つまらない絵ではなかった。 美事だった。 なぜ...
「菊池の創作した忠直」なのか「太宰の解釈する忠直」なのか 「水仙」(太宰治)(「きりぎりす」)新潮文庫 親しく交際している草田氏が「僕」をたずねて妻の静子の行方を捜しているという。草田は静子に洋画を習わせたが、出入りする...
「自分探し」の先駆け的実験 「虚構の春」(太宰治)(「二十世紀旗手」)新潮文庫 近頃、君は妙に威張るようになったな。恥かしいと思えよ。いまさら他の連中なんかと比較しなさんな。お池の岩の上の亀の首みたいなところがあるぞ。た...
「女生徒」と本作品が、心のどこかで繋がってしまう 「千代女」(太宰治)(「きりぎりす」)新潮文庫 十二の時に、柏木の叔父さんが、私の綴方を投書して下さって、それが一等に当選し、選者の偉い先生が、恐ろしいくらいに褒めて下さ...
たくましくも戦争と向き合ってきた日本文学 「日本文学100年の名作第4巻 木の都」 新潮文庫 「木の都 織田作之助」十年ぶりに大阪の町を訪れた「私」。何気なく入ったレコード店の店主の顔は、どこかで見た記憶があった。降り出...
明日を信じようとしていたかのような太宰の心境 「薄明」(太宰治)(「グッド・バイ」)新潮文庫 空襲によって東京を焼け出された「私」は、妻の実家のある甲府へと疎開する。実家には妻の妹が一人で住んでいた。気を落ち着かせる間も...
太宰の心の闇がしっかりと刻み込まれている 「犯人」(太宰治)(「津軽通信」) 新潮文庫 「一緒に帰れるお家があったら、幸福ね」という森ちゃんからの言葉を受け、鶴は二階の部屋を借りられるよう姉の嫁ぎ先を訪ねる。しかし姉から...